竹の秋には竹林へ


        
 俳句の季語で「竹の秋」といえば春をさし「竹の春」といえば秋のことをいいます。
 竹は春、落葉するからです。

  落葉するころには新しい葉が育ちつつあるので、遠くから竹林を眺めると黄みどり色で、あまり美しくありません。

 でもこの季節ぜひ竹林に足を踏み入れることをおすすめします。
 ちょうどたけの子が育ち盛りで「もう、たべられないからネー」と安心しているころがいい。

 いつもは土や雑草や朽ちた雑木などが地表を薄暗くさせてなんとなく入りにくいと思っている人もこの季節はちがいますよ。この季節は竹の枯れ葉が地表を一面こがね色に変え、まわりを明るくさせ歩くにはじつに快適です。

 今年の竹の生育を見ながら「おー、君なかなかいいねえしっかり育ってね」などと励ましながらの散策は至福のひと時です。

 竹林はまさに大家族。生まれたてのほやほやの竹、少年のようなしなやかな竹、たくましく真っ直ぐに伸びる青年の竹、太くたくましい熟年の竹、かたちや色にこだわる壮年の竹、もう、ご隠居さんの立ち枯の竹、そして残る切り株まで朽ちて行く竹…….。

 この朽ち竹には、はっとせられる造形に出会うことがあります。

 「野の花がこれほど似合う花入れがあるだろうか」いつも原点に戻れるひとときです。