軽井沢駅の貴賓室のお花

 

夏の終わり、軽井沢に静養にこられた天皇陛下ご夫妻は、お帰りになる時軽井沢駅の貴賓室でお休みになられる。
その部屋に花を飾られるのが、槙野あさ子さんだ。

「美智子さまは、夕すげの花がお好きなので、野原で見つけておいたのよ」と明るい声の電話が入る。
依頼どうりの節間の長い枝付きの孟宗竹を切り出し、葉が枯れないように養生をし
軽井沢まで宅配便で送る。
葉が枯れないことを祈って。

翌日、「美智子さまにお声を掛けて頂いたのよ!」と明るい声の電話が入る。
僕もホッとし、嬉しくなる。

 

槙野あさ子さんの「離山房」


槙野さんは普段湘南に住んでいるのだけれど、夏の間だけ(今は4月から10月)軽井沢で
「離山房」という喫茶店を開いている。
写真家だった御主人の友人で小説家の水上勉さんの勧めて35年前から始めた喫茶店だ。
軽井沢は華道家でもあるあさ子さんには自然の草花に囲まれご機嫌な場所になった。
僕とは「山の花、里の花」という本を出された時、籠を提供したのが縁でかれこれ30年の
付き合い。

別荘地の中の林に囲まれたまるで小鳥のすみかのような店で、避暑地の住人のオアシスか
散歩の途中の止まり木的存在だったのだが、今は伝説の店となってしまった。

というのは....

ジョン レノンとオノ ヨーコさんの贔屓のお店だったのだ。
夏は必ず軽井沢で息子のショーン君と三人で過ごし、 自転車にショーン君を乗せて気楽に
店に来たそうだ。 
あの年、愛用のライターを店に忘れてアメリカに帰り、その後凶弾に倒れた。
店にはジョンの絵入りサインや家族写真(ショーン君との親ばか的写真なども)やいくつかの
逸話を残して帰らぬ人となった。
今もオノ ヨーコさんショーンさんとの親交があり「離山房」を訪ねてくるファンのため店は夏だけ
ではなく春から秋まで開けるようになる。

明るく、パワフルなあさ子さんは沢山の友達やお花のお弟子さんや店にやってくるお客さんに
囲まれてますます輝いてる。
たまに俳句の投稿欄にあさ子さんのお名前を発見して「おお、元気!元気!」

来夏、軽井沢の離山房へあさ子さんの笑顔と活力をもらいにたずねて行きましょう。。