北海道、十勝平野の旅


  夏休みに何処か行こうと思っていた。
  折しも今、NHK朝ドラの舞台が十勝のようだ。
  北海道は何度か旅行に行っているけど、十勝平野は行ったことがない。
  各ツーリストが計画しなかったのは、通り過ぎることはあるが名所、旧跡が少ない
  ので二泊三日は無理無理!という事だったそうだ。
  むしろこういう所が良いなあ。なにしろ広い平原、広大な畑がある。
  旅の感動は自分で見つけた方が楽しいし思い出に残る。

  帯広空港に降り立った。


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  ばんえい競馬の牧場は帯広空港のそばにある。
  馬をマヂカで見た。大きな澄んだ瞳で見られると、見透かされているようで(何を?)
  恥ずかしい。うつむいてしまう。
  大量のニンジンが用意されていた。屑ニンジンと言っていたけどラペにしたら美味しい
  だろうな。


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  名所がないと言ったが旧跡はあった。
  今は廃線となっているが幸福駅には人がいっぱいいた。
  駅に貼られている願い事・・・、真面目で真剣な手書きの字が良い。
  でも、あれッ? 神社でも無く、駅舎。何様にお願いしてるのかなあ?
  僕も線路に転がっている鉄サビ色の石ころを手のひらに乗せ、旅先での安泰と健康と
  世界平和と地球温暖化解決を祈った。
  ここでは石ころだって願いを聞き届けてくれるかもしれない。


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  「モール温泉」十勝川温泉、ホテル大平原に泊まる。
  植物のエキスと岩石のミネラルをたっぷり含んでいるので、アメリカンコーヒー色と
  いうか、ドクダミ茶色というか、別名「美人の湯」と言って肌にいいそうだ。
  美人が入りに来るのか、浸かると美人になれるのか・・・・
  しかしなあ、一晩では・・・。

  翌朝、無理に頼み込んで気球に乗せてもらう。
  昔フランス映画で「素晴らしき風船旅行」というのを観てからの憧れだった。
  映画ではツナが切れたりのハラハラ場面とのんびりふわふわ、鳥のように田舎の風景の
  中を風まかせで漂う。動いているのに音がしないのがいい。
  百メートル位しか登らないのが残念だけれど、景色が素晴らしい。
  朝の風が心地よいし念願の籐のカゴに乗れたのが良かった。


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  農場ピクニックも良かった。
  サイズもぴったりの長靴を貸してくれ、畑の感触が足の裏を通じて心地よい。
  広大な農地を畑ガイドさんが案内してくれる。
  ガイドさんが問題を出す。この植物は何でしょう、この豆の花の色は・・・
  僕は約10年、農家から50坪ほどを借りて野菜作りを楽しんだことがあるのでガイドさん
  に褒めてもらいたいから瞬発に答えてしまう。
  困ったガイドさんの顔を見て、以後答えないようにしたので、その後は他のお客のトン
  チンカンな答えに満足の笑みを取り戻し、詳しく説明してくれる。

  みんなでトウモロコシをもいで茹でてもらい、畑の真ん中のテントの中でホットプレート
  で焼かれたジャガバター、チーズ、フランスパンの昼食が良かった。
  素朴で人柄が伝わるおもてなし。
  食べながら周りを見回す。一面のトウモロコシ畑に牧草地。
  あれ、どっかで見た風景!
  そうだ、フィールド オブ ドリームだ!自分のトウモロコシ畑に今は亡き大リーガーの
  ために野球場を作るというファンタジックな映画だった。
  あー、主役の名前が思い出せない。喉にトゲが刺さった感じ・・・。
  ソーセージを追加しにきたおねーさんに思わず聞いてしまったが、困った顔を残して行っ
  てしまった。すみませんでした。

  その夜は帯広駅のそばにあるホテルに泊まることに。
  これも粋な計らいで、夕食はホテルが約20軒の飲食店で使える券を配ってくれる。
  僕は散策しながら、屋台村という屋台ばかりの店の一軒に入る。
  まず、ビール。ツマミは美味そうなものばかり。
  そこへ二人ずれの女性が入ってきて、声をかけられた。
  ツアーに参加している人だった。
  「お父さんは家にいた方が良いんだって・・・、誘ったのに・・・」
  という家庭環境、夫婦、父娘関係が垣間見られた。(ジョークですよ)
  昼間の畑の風景からフィールドオブドリームの主役の名前が思い出せない話をしたら
  即座に「ケビンコスナー」ですよ、と娘さん。
  「彼とホイットニーヒューストンが出てる映画なんでしたっけ」という質問。
  「ボディーガード」と僕。楽しいおしゃべりが続く。
  2時間以上食べて飲んで、ほんの少し足が出た程度の勘定。
  ほろ酔いの帯広の街は風も爽やか。    


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  翌日のナイタイ高原牧場が良かった。
  日本一広い公共牧場だそうで、遠くの日高山脈まで見渡せる。
  牧草なのか畑なのか雑木林なのか緑色の種類の多さに感動。
  この辺りで空は晴れ、遠くまで澄み切った天候を十勝晴れというそうで
  三日間も続くのは珍しい事だそうだ。
  ツアーガイドさんが嬉しそうに一番喜んでいた。


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  真鍋庭園、紫竹ガーデンなど見学。
  冬は極寒、雪、凍土の下で春を待つ種、宿根草。
  年月をかけ、研究し、この地に合う植物を愛情を持って育て作り上げた人たちの苦労を
  思う。もう早めの秋の花が愛おしい。
  でも針葉樹林は北国に合う。作られた庭園では何処かメルヘンチック。


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  朝ドラで「神田日勝」という若くして亡くなった画家の美術館も良かった。
  馬の絵が多く、目があってもうつむかないで(当たり前です)愛情を持って描いたんだ
  ろうな・・・。「飯場の風景」「ゴミ箱」も良かった。
  途中、ドラマでロケ用に作られた彼のアトリエの前に献花台が作られていて若い女性
  の姿があった。神田日勝の役を演じているのが人気俳優らしく、ドラマ上今週亡くな
  ったそうだ。献花台には花束があふれていた。おじさんには?分からない。


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  実は今回の旅で一番のサプライズがあったのだけれど、個人的すぎたり写真がないので
  割愛することに・・・。

  十勝ワインと四つ葉印チーズでも齧りながら、楽しかった旅を思い出そう。